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昆虫セミナーで実感した”好き”や”楽しい”の学びと、その大切さ

昨日、久々に店頭でセミナー的なイベントを実施いたしました。
講義内容的なコンテンツは店のWEBサイトに更新させていただきましたので、このサイトでは別の視点で更新しますが、店のWEBサイトと合わせてご覧いただければ幸いです。

PORTAL Seminar Report

コロナ禍の影響で久々のイベント

新型コロナウイルスの影響で、長らく店頭でのイベントを自粛しておりまして、前回のセミナー的イベントは宮崎大学の名誉教授をお招きしてのイベント。
このイベントですら久々の実施で、店のCOMMUNITYのメンバーの方限定で実施した記憶があります。

前回のイベント

前回のイベントでは、宮崎県と大分県の県境に位置する “祖母傾大崩山系” の自然をテーマに実施したのですが、今回はもう少しマニアックに “昆虫の魅力と、生態から感じる宮崎県の自然” と、テーマだけ見るとなんとも固いイベントなイメージ…
それでもご参加いただける方がいらっしゃるのは、本当に嬉しい限りでございます。

店を営ませていただきながら、お客様と一緒に学び、楽しみというのは本当に大切にしたいと思っていまして、昨今の情勢の中でもこうした取り組みを大事にしたいと心底思うものです。

“好き”や”楽しい”の学び

今回講師としてお招きしたのは、宮崎県でユネスコエコパークに認定されている綾町の、ユネスコエコパーク推進室から昆虫調査を専門とする木野田先生。
以前に僕らは木野田先生の昆虫採集・調査に同行させていただいたり、調査に必要な装備を僕らの店で準備いただいたりと、日頃から交流させていただいている専門家の方です。

僕らが先生とお話していつも感じるのは、本当に自然や昆虫が好きで楽しく話されること。
木野田先生だけでなく、お付き合いくださる専門家の多くも同様で、当然ながら仕事や責任を持ち従事されながらも、楽しそうにいつも語ってくださいます。

標本を見ながらお客様に昆虫の説明をしてくださる木野田先生

標本を見ながらお客様に昆虫の説明をしてくださる木野田先生

いつも和かに様々な魅力をお伝えいただくので、つい僕らも引き込まれてしまうのであります。
そして何より、話が非常に上手で、終始感動しておりました。

講師としてお招きした先生も当然ながら、日頃山を楽しむ皆さんと”好き”や”楽しい”が学ぶ場に繋がることは、その場に居て本当に嬉しく光栄なものです。

昆虫の美しさ

男性では幼少期に一度は虜になる昆虫の魅力。
それはやはり、大人になっても美しいと感じるものでありまして、講義中にマジマジと昆虫の写真を撮っておりました。

蟻の標本

蟻の標本

初めてこんなに真剣に蟻の標本と睨めっこしましたが、個人的には「用語が書かれたプレートが何ともカッコいい」なんて思っておりまして、コレクション癖の強い方にはたまらない趣味だなと思っておりました…汗

クワガタの標本

クワガタの標本

上の写真はミヤマクワガタ。
幼少期から見つけると「ヨシ!」という美しいクワガタ。未だに釣りをしながら渓谷沿いなどで見かけた時は感動するものです。

蛾の標本

蛾の標本

個人的には決して”得意”な部類ではない蛾ですが、じっくり見ると何とも美しく触角の美しさも素晴らしい…
蛾の魅力は、それを得意とする木野田先生に以前も教わったことがあり、以来観察するのが楽しくなった昆虫です。

オサムシの標本

オサムシの標本

今回参加いただいた方々と一緒に感心・感動した昆虫のひとつ”オサムシ”。上の写真は九州には生息していない東日本方面の個体で、進化の過程で羽が退化し飛ばなくなったことで、海を渡ることがなく地域により個体差のある昆虫だそう。

下の写真は東日本方面でも、また違うエリアのオサムシ。

オサムシの標本

オサムシの標本

色味が異なるのが分かるかと思います。
そしてまた別のエリアのオサムシが下の写真。

オサムシの標本

オサムシの標本

これが西日本・九州だと黒い個体(下の写真)

オサムシの標本

オサムシの標本

写真を撮り忘れましたが、さらに南下し宮崎県周辺では大きくなり、お尻が尖っているオサムシ。
僕は幼少期に”ゴミムシ”として、あまり好きな感情を持ったことのない昆虫ですが、こうして生態を伺ったり他エリアの虫を見ると、少し美しさを感じるものでございまして、参加された方も「苦手意識のあった虫を美しいと思うようになった」と語っておりました。

没頭してしまうと、とんでもないことになりそうなので、程々に楽しめたらなと心にブレーキをかけている真っ最中です…

調査研究する方、守る方と、楽しむ方のギャップ

時折感じることですが、森や森林を調査研究する方々や保全する方々の多くは「森がダメになっている」「この先どうなるんだろうか」と、そうした懸念の声を話してくださいます。例えばニホンカモシカは九州ではほぼ確実に絶滅すると言われ、昨日の講義では「九州のブナが滅ぶ時代を今見ている」という研究者も居ると語ってくださいました。

永く登山や渓流釣りと、山間部の遊びを楽しまれている方の多くもやはり同様に、そうした環境の悪化なのか変化なのかを肌で感じられている方が多く存在しますが、その反面、まだまだそうした状況を知らない方も多く、関心のある方でもなかなか目に入らないという状況も存在します。

昆虫を眺めて楽しむお客様

昆虫を眺めて楽しむお客様

それもそのはずで、これから山遊びを楽しもうという方が「よし環境の今を調べよう」なんて思わないのは当然のことでありまして、純粋に「自然は美しい」と風景を眺めて感動するのであります。自然を歩いてスッキリ感動したいという思いを持ちながら、果てていく森の現状を調べようとすることの方が不自然なことだなと時折感じます。

だからこそ、僕らは専門家の方々にお願いしてこうした講義的なイベントの機会を設けることで、お客様と一緒に様々なことを知り、それをまた眺めて感じようと思うのであります。僕らは山や自然をお客様にお供して歩きながら、例えば荒廃した森を見た時はそれを説明し、守られているエリアを見れば、その活動を行なわれている方々のことを伝えるように努めておりますが、今では徐々にそうした方々とお客様が繋がり始め、調査研究する方々や保全活動を行う方々にも喜んでいただける機会が増えました。

先に書いた、調査研究や保全活動をされる方の森のイメージ、これから楽しもうという方のイメージ、時折感じるこのギャップは、埋まることで双方が楽しんだり、喜びが生まれるものだと感じます。(時に衝撃を感じられることも多いですが…)

それもまた自然

僕らが木野田先生の昆虫生態調査に初めて同行させていただいたのは、今から2年前の2020年8月。
真っ暗な森で、ひとり調査を行う木野田先生の姿を拝見して、非常に感銘したのをはっきり覚えています。

調査同行時の一コマ

調査同行時の一コマ

誰も居ない森の中、飛来してくる昆虫を数えたりチェックし、生態を調べる。
本当に素敵な仕事である反面、非常に大変で困難な面も多くあるなと勝手に想像しておりました。

昨日のイベントでの質疑応答で「保全するスピードよりも悪化するスピードの方が早いと考えられる」との話がありましたが、僕らにはまだまだ難しいことや分からないことが多く存在します。だからこそ、お客様と一緒に楽しく学び、それを山や自然の中で感じることから大切にしていきたいなと感じるのであります。

そして時折、木野田先生のように想いや情熱を持って活動される方々の姿もまた、僕らが眺める自然のひとつの光景だなと感じることがあります。
こうした光景もまた、知ることで美しさを感じる自然の姿であります。

久々の店内でのイベントは、非常に楽しく感動する時間でございました。また次回も楽しみに、新しいイベントを企画してまいります。

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Shogo Nakano

Shogo Nakano

PORTAL 店主

宮崎県のアウトドア屋「PORTAL」の店主です。 山歩き、渓流釣りをはじめ、のんびり色々な自然の楽しみ方を満喫しながら、色々な方と一緒に遊べるのを楽しみにしています。

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