アウトドア屋のライフログ

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山を楽しむ人・守る人・調査する人

来月、久々に店頭でのイベントを企画しました。
昨今の情勢でイベントなどを実施しづらい状況ではございますが、そうやって店内イベントなどを控えてもう2年以上。
久々に実施するセミナー的なイベントは昆虫をテーマに、専門家の方にお越しいただいて実施です。

イベントの詳細は店のWEBサイトに書いていますので、よろしければ併せてご覧ください。

STORE SEMINAR”昆虫”

様々な山の人の繋がり

アウトドア業界に転身する前に宮崎県の自然の美しさなどを保全する活動に参加したいと、ボランティアで希少植物の保全活動などに参加させていただいていましたが、当時参加しながら”自然を保護する活動”に、”自然を楽しむ方”の参加がないことに驚いた記憶があります。

波乗りなど、海の遊びを楽しんでいた頃は海の清掃活動などを、積極的に海を楽しむ方々がSHOPやベテランの方を中心に実施されておりましたが、山の遊びにおいては知られていないことが多いと感じると同時に、今にも絶滅してしまいそうな植物の存在なども同様に知られていないなと感じ、地域の魅力や自然の価値・楽しみ方などをもっと広めていけたらと、そんな気持ちもアウトドア業界に転身した時の理由のひとつです。

自分で店を出してからは、有難いことに山間部で登山道整備などを行う方々との交流機会も増え、整備などに同行させていただいたことも。

宮崎県北部の山域の登山道整備に同行させていただいた際の一コマ

宮崎県北部の山域の登山道整備に同行させていただいた際の一コマ(スタッフ撮影)

よくお客様との話に出ることもありますが、僕はそもそも「山が好きで仕方ない」というのが店を出した理由ではなく…という話は、話が逸れてしまうので置いておきますが、様々な山の人の繋がりを大切にしていくことは、僕らが働く上で、とても大切に考えています。

登山道整備を行う方々、魚を放流する方々、環境保全活動を行う方、環境調査を行う方。

僕らが日頃山間部で様々な遊びを楽しむ蔭には、たくさんの方々の活動が存在しておりまして、最初は”手付かずの自然”だと思っていたフィールドも、誰かが整備し誰かが守っている場所だと、日々整備に携わる方々と話して痛感いたします。

知ることは楽しみに繋がること

とは言え、「遊びを楽しみたい」という人に「学習しろ」と言うのは「サービスとして如何なものか」という思いもあり、僕は誰かお客様が関心を示したものや「知りたい」と意見を下さったものについて、専門家にコンタクトを取らせていただいて講義などの時間を作っていくようにしています。

以前は宮崎大学の名誉教授をお招きし、地質・生態系から見る祖母傾山系の魅力や、九州では希少となってしまったカモシカの話などを色々と話していただきました。

宮崎大学・名誉教授をお招きした講習会の一コマ

宮崎大学・名誉教授をお招きした講習会の一コマ

鬼の目山の天然杉・絶滅してしまいそうなニホンカモシカ・杉の遺伝子・ソボサンショウウオ・枯れてしまったスズタケの話と、山の遊びを楽しんでいない方が聞くと「どこの話」かも分からなければ、「何のことを言っているのか」も分からない講義の内容かもしれませんが、参加した方の多くは講義の内容が理解できている訳でございます。(それ自体が素晴らしいことですが)

そして、その希少性を知ることでカモシカを見た時の感動も大きくなれば、日頃風景を眺めながら感動して歩く場所も、違った視点で楽しむことが出来るようになる訳でございまして、どんな分野であれ、知ることや学ぶことは、より大きな楽しみにも繋がるのだと個人的にはよく感じることがあります。

だから僕はお客様が「知りたい」「面白そう」だと仰ると、それについてより深く知ったり楽しんだり出来るように、専門家の方にコンタクトを取って講義を依頼したりする訳ですが、調査研究する方・保全活動する方もまた「調査だけでは」「活動だけでは」と考えられている方も多く、超多忙なスケジュールにも関わらず、快く引き受けてくださるのが本当に有難い限りです。

とは言え、専門家の方々に引き受けて下さったからには、僕らはその時間がより良い時間になるようにと仕事が増える訳でありまして、地道に色々な方に声をかけたりと参加者を募る訳です…(個人的関心事などがある時は大抵出かけて、専門家の方に直接質問をしてしまうので…汗)

実のところ「そんな利益にならない活動をしたところで」と、時折お叱りをいただくことも多いのですが、山の遊びを楽しむ方・それを守る方と交流が生まれた後に、いずれかが喜んでくださるお顔を拝見すると、やっぱり頑張らねばなと元気をいただくのであります。

森を守る方と、楽しむ方の交流イベントの一コマ

森を守る方と、楽しむ方の交流イベントの一コマ

ターニングポイント

元々こうしたイベント的企画については、お店として非常に大切にして行きたいなとは思っていたのですが、色々な保全活動をされる方や調査をされる方に、積極的に会いに行くようになったのは、ひとつのきっかけがございます。

一昨年の話でございますが、釣りを楽しまれる馴染みのお客様との会話で、僕らがよく通う渓谷の入り口に「4畳ほどの穴が掘られており、そこに無残に鹿の亡骸が捨てられていて『あれはないよなぁ』と感じてしまうよ」と伺ったのであります。

ちょうどその後に釣りの予定があり、その渓谷へ出向いてみますと話に聞いた穴。恐る恐る中を覗くと伺った通り、無残にたくさんの鹿の亡骸。
その後に渓谷沿の林道を歩いていましても、罠にかかった鹿を見つけたり、入渓予定の場所にも「罠注意」との看板。何より食されることなく埋められる鹿の亡骸に驚きを隠せず、帰宅後に猟友会の方にアポイントをいただき、お邪魔して色々と聞かせていただきました。

後日、同じ谷で出会った鹿

後日、同じ谷で出会った鹿

猟友会では食すことなく亡骸を捨てるというのは無く、行政から委託された業者の獣害駆除だなと丁寧に教えてくださったのでありますが、獣害駆除の問題が年々大きくなっていることを知りつつ、多くの亡骸を目の当たりにすると、あまりの自分の無知さもダメだなと猛省いたしたのであります。

楽しむ人・守る人・調査する人

獣害駆除云々は置いておき、僕が宮崎県を訪れた頃に「手付かずの自然は凄いなぁ」と感動していた場所は、誰かが守り調査し、維持しようと願われている場所がほとんどでありまして、僕自身ももっと様々な方に学びながら様々なことを知りたいと思っていますが、同時にお客様にもその楽しみや喜びを感じて欲しいなと実感しています。

とは言え、いきなり「勉強しましょう」というのもなかなか、まだ難しいものでございまして、誰かが「知ってみたい」「やってみたい」という気持ちになるものがないか、常にアンテナを貼りながら「知ってみたい」という声が聞こえた時に専門家の方々に連絡して、協力を乞うのであります。

楽しむ人は、守る人や調査する人のことや考え方に知識や想いを知り、守る人は、楽しむ人の気持ちや喜びに調査する方の苦労や努力を知り、調査する人は、楽しむ人の気持ちや喜びに、守る人たちの想いを知ることは、何が起こるのかは分かりませんが、きっと素敵なものだと思うのです。

久々に店でのイベントを実施いたしますが、これからはこうした企画も少しずつ考えて行きたいなと思っております。
是非、ご覧いただいた方も一緒に楽しんでみませんか。

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Shogo Nakano

Shogo Nakano

PORTAL 店主

宮崎県のアウトドア屋「PORTAL」の店主です。 山歩き、渓流釣りをはじめ、のんびり色々な自然の楽しみ方を満喫しながら、色々な方と一緒に遊べるのを楽しみにしています。

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